Column

次世代の監査部門をどうつくるか。変化に備える体制とスキル

データ活用と人材育成の両輪で、環境変化に強い監査部門をどう築くかを展望します。

不正の手口は巧妙になり、事業リスクは多様化し、求められる規制対応も年々複雑になっています。こうした変化のスピードに、従来のやり方のままの監査部門は追いつけなくなりつつあります。いま必要なのは、目の前の監査をこなすことだけでなく、これから訪れる変化に適応し続けられる監査部門を、意識的に育てていくことです。

次世代の監査部門づくりとは、最新のツールを導入することではありません。変化に適応し続けられる体制と人を育てることです。

これからの監査に求められるもの

経験と勘に支えられた監査は貴重ですが、それだけでは複雑化するリスクを捉えきれません。これからは、データに基づいて対象を選び、根拠を示して結論づける監査への移行が進みます。ただし、テクノロジーを入れれば解決するわけではありません。データを扱える体制、それを使いこなすスキル、そして変化を前向きに受け入れる文化。この三つがそろってはじめて、監査部門は次の段階へ進めます。

いま備えておくべき優先領域

限られた体力でどこから手を付けるかを決めるなら、次の3つが起点になります。

  • データ基盤の整備:分析に使える形でデータを蓄積・連携し、いつでも検証に活用できる状態を整えます。
  • リスクアナリティクス:データからリスクの高い領域を可視化し、監査資源を重点的に配分します。
  • 不正の予兆検知:過去のパターンから兆候を早期に捉える、分析的なアプローチを取り入れます。

「全件監査」という発想

これまでの監査は、限られた時間のなかでサンプルを抜き取って確認するのが一般的でした。しかしデータ分析を活用すれば、対象を全件レビューし、そのなかから例外的な取引だけを抽出することが可能になります。膨大なデータの海から、人手では見つけにくいリスクの兆候を拾い上げる。これが、これからの監査の標準になっていきます。

段階的に取り入れる利点:

  • 網羅性:抜き取りに頼らないため、見落としのリスクを減らせます。
  • 客観性:数値とルールに基づく判断で、結論の説得力が増します。
  • 無理のない導入:一つの業務から小さく始め、効果を確かめながら広げられます。

監査計画の立て方が変わる

データ活用が進んで最初に変わるのは、実は監査の実施手続ではなく監査計画です。従来の年度計画は、前年の実績と部門の重要性をもとに、一年の対象を年度初めに固定するのが一般的でした。データからリスクの所在が継続的に見えるようになると、この前提が成り立たなくなります。

変えるべきなのは、次の2点です。

  • 計画に余白を持たせる:年間工数の一定割合を、期中に判明したリスクへ充てる枠として空けておきます。すべてを年度初めに割り当てると、変化に反応する余地が残りません。
  • 見直しの時期をあらかじめ決める:「必要に応じて見直す」は運用されません。四半期ごとなど、計画を点検する時期を先に決めておきます。

計画を動かせるようにしておくことは、実施手続を高度化するより先に効いてきます。どれだけ精緻に分析しても、その結果を反映する枠がなければ、翌年度まで手が打てないためです。

いまのうちに「データを整えておく」ことの価値

将来「あのときのデータを分析したい」と思っても、証跡が残っていなければ手の打ちようがありません。データ活用の効果は、蓄積された情報の質と量に大きく左右されます。だからこそ、分析の仕組みが完全に整う前から、日々の監査で扱うデータや証跡を、後から検証できる形で保全しておくことが重要です。いまの一手間が、数年後の監査の選択肢を広げます。

優先順位をつけるなら、まず指摘事項と是正状況から着手するのが効率的です。件数が限られていて構造化しやすく、しかも部門をまたいだ横断分析にそのまま使えるためです。

監査人のスキルをどう育てるか

データを活かす監査部門をつくるうえで、最後の鍵を握るのは人です。高度な専門家を外から招くだけでなく、いまいる監査人がデータリテラシーと分析的な思考を身につけていくことが欠かせません。テクノロジーに使われるのではなく、使いこなす。そのためのリスキリングを、日々の業務のなかに少しずつ組み込んでいく姿勢が求められます。

ここで避けたいのは、研修だけで済ませることです。座学で学んだ分析手法は、実際の監査で使う機会がなければ数か月で失われます。今年度の監査計画のどこで使うかを先に決めてから学ぶという順序にすると、定着率がはっきり変わります。全員が同じ深さを目指す必要もありません。分析を主導できる人を数名育て、残りは出力を読み解けることを目標にする、という設計のほうが現実的です。

投資を通すために、何を示すか

データ基盤も人材育成も、単年度では成果が数字になりません。ここが、次世代の監査部門づくりが途中で止まる最大の理由です。「効率化で工数が何%減りました」という説明は分かりやすい一方で、それだけを掲げると、削減幅が頭打ちになった年に投資の根拠を失います。

監査部門が示すべきなのは、工数ではなくカバレッジと発見の質の変化です。

  • 見られている範囲:これまで抽出でしか見られなかった領域のうち、全件で確認できるようになった割合。
  • 発見の時期:問題が起きてから検知するまでの期間が、どれだけ短くなったか。
  • 再発の有無:是正済みとした指摘が、翌期以降に再発していないか。

いずれも、監査の目的そのものに直結する指標です。工数削減は結果として付いてくるもので、目的に据えるものではありません。この順序を最初に合意しておくと、数年にわたる取り組みでも説明の軸がぶれずに済みます。

おわりに:変化を先取りする監査部門へ

次世代の監査部門は、一足飛びには実現しません。データ基盤を整え、分析を取り入れ、人を育てる。一つひとつは地道な取り組みですが、その積み重ねが、変化に強い監査部門をかたちづくります。

AuditX-SaaS」は、監査データの蓄積と活用、業務の標準化を通じて、こうした変化への一歩を支えます。目の前の効率化にとどまらず、その先にある監査部門の姿を見据えて。私たちは、変化を先取りする監査部門づくりに伴走します。

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