次世代の監査部門をどうつくるか。変化に備える体制とスキル
データ活用と人材育成の両輪で、環境変化に強い監査部門をどう築くかを展望します。

自動化が進むほど際立つ、監査人ならではの判断と洞察。テクノロジーとの役割分担を考察します。
AIをめぐる議論は、しばしば「仕事が奪われるのではないか」という不安に傾きがちです。しかし内部監査の現場に目を向けると、実態はもっと前向きです。目的を持って活用されたAIは、監査人を単純作業から解放し、本来注力すべき判断や洞察に時間を割けるようにする、心強い相棒になります。
テクノロジーが真価を発揮するのは、人の判断を置き換えるときではなく、人の力を引き出し、その専門性を後押しするときです。
大切なのは、人が最終的な判断を握り続ける「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の考え方です。AIがブラックボックスとして独立して動くのではなく、監査人の手元で作業を支える。定型的な処理はAIに任せ、監査人はデータの集計係から、リスクを見極める判断者へと役割を移していきます。
内部監査において、AIが力を発揮する場面は大きく3つに整理できます。
「どこまでAIに任せるか」は、精度の議論に見えて、実際には責任の議論です。判断を誤ったときに説明を求められるのが監査人自身である領域は、どれだけ精度が上がっても人が握り続ける必要があります。
線引きの目安として、次のように整理すると実務が動かしやすくなります。
この線引きは一度決めて終わりではなく、文書にして共有しておくことに意味があります。明文化されていないと、担当者ごとに委ねる範囲がばらつき、結果としてAIの出力をそのまま結論にしてしまう運用が紛れ込みます。
AIが監査の現場で使われるには、信頼できることが大前提です。だからこそ重視すべきは、判断の根拠を説明できること(説明可能性)です。ある取引に異常のフラグが立ったとき、単に「はい・いいえ」を返すのではなく、なぜそう判断したのかを簡潔に示せることが、監査人の納得と検証を支えます。
信頼を積み上げるために:
説明可能性は、監査調書の要件そのものでもあります。「AIが異常と判定したため詳細に確認した」とだけ書かれた調書は、第三者が同じ手続を再実施できません。どの条件に該当したのかまで記録に残せて、はじめて監査の証跡として成立します。
サンプル抽出から全件チェックへ移ると、見つかる件数は当然増えます。ここで多くの現場がつまずきます。検知件数が増えることと、リスクが増えることは別なのに、件数の多さがそのまま負担として跳ね返ってくるためです。
全件化を機能させるには、検知そのものより、検知したあとの扱いを設計しておく必要があります。
AI活用の効果として見落とされがちなのが、監査人の働きがいへの影響です。単調な確認作業や転記の繰り返しから解放されれば、監査人はより専門性の高い業務に集中でき、疲弊も抑えられます。人材の確保が難しい今、これは組織にとって見過ごせない価値です。
採用や育成の観点でも同じことが言えます。入って最初の数年が転記と突合で埋まる職場と、初年度から論点の検討に関われる職場とでは、定着率にも成長速度にも差が出ます。定型作業を減らすことは、人材戦略の一部でもあります。
前節までの考え方を、具体的な業務に当てはめてみます。経費精算や仕訳のチェックは、切り替えの効果が最も早く表れる領域です。監査人は膨大な明細を一つずつ突き合わせる作業から解放され、抽出された例外について「なぜそれが起きたのか」を掘り下げる、監査人にしかできない仕事に時間を使えるようになります。
このとき成果として報告すべきなのは、確認件数が何倍になったかではありません。従来のサンプル抽出では拾えなかった論点に到達できたかどうかです。件数を成果指標に置くと、現場は件数を増やす方向に最適化してしまいます。
これからの監査部門に求められるのは、監査人とテクノロジーを対立させることではなく、一つのチームとして機能させることです。冷たい機械に置き換わる未来ではなく、機械が時間を取り戻してくれることで、人がより人らしい判断に集中できる未来を目指すべきです。
「AuditX-SaaS」は、定型業務を引き受けることで、監査人が判断と洞察に集中できる環境づくりを支えます。AIは監査人の敵ではなく、その専門性を最大限に引き出すためのパートナーである。私たちはそう考えています。
AuditX-SaaSの導入や、内部監査DX・業務改革のコンサルティングについてご相談を承ります。監査の現場を知るチームが伴走します。
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